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コラム「イベント会場化する美術館とタレント化する芸術家」
(山本勝彦さん)

先頃日経ホールで「ミュージアム・サミット」というシンポジウムが開催され、
日本・アメリカ・イギリス・フランス・オランダの 五ヶ国の美術館長のパネ
ルトークがあり、その中で様々な美術館の問題点が指摘された。

美術館はもともと王侯・貴族や教会・寺院などの所蔵品を公開する目的で始ま
り、その為に作品を修復・保存すると共に研究と教育も担うところであった。
しかし、近年は大半の美術館が国家や都市などの公的な美術館になったことか
ら、当初の目的以外の様々な要求に対応せざるを得ない状況に陥っている。所
蔵品の展示だけではなく、地元作家や日曜画家の為の市民ギャラリーの運営、
子供や市民を対象としたワークショップなど求められる要求は多岐にわたって
いる。メインである作品の展示についても所蔵品による常設展では人が集まら
ず、国内外の有名作家を集めた企画展でないとだめという風潮に各国ともなっ
てきている。一方予算が削減されたり、経済的な自律を迫られる中、存亡に関
わる苦境に陥っている美術館も出てきている。

この様な状況の中、美術館もようやくお客を意識し、入場者を集めるための努
力を余儀なくされてきており、中には従来の発想では考えられないマンガとか
アニメなどデパートの催事のような企画を始めるところも出現し、折りからの
「ジャパニーズ・クール」のブームもあり成果をあげている。

このことはとかく小難しい美術鑑賞ではなく、市民に分かりやすく、身近な美
術館作りという意味では一定の評価はできるし、今後この様な動きが既存の美
術館の活性化策としても定着するものと思われる。

しかし、一方で所贓品をまったく持たない美術館も出現しており、六本木の森
美術館は世界的に有名な作家の企画展やイベントで集客を謀り、同じく六本木
の防衛庁跡地にできる予定の国立美術館は所贓品を持たない巨大な貸し美術館
で公募団体展の会場とイベント企画での運営が中心になると思われる。

この様な美術館の状況は当然作家にも影響を与え、美術館での展覧会は物故・
現存を問わず、ますます知名度の高い作家に集中することになると思われる。
従って現存作家については、その作家の芸術家としての評価より、現在どれだ
け知名度・人気度があるかというタレント性の方が重要となる。

以上のような動きは美術館の存続の為には必然的なことかも知れないし、これ
までのような「立派な作品を見せてやる」という発想でなく、「どのような企
画をお客さんに楽しんでいただくか」という意味では美術館の意識革新にとっ
ては大切なことである。

しかし、時代が変わったとしても美術館には歴史的な芸術品を保存・研究・展
示するという使命があり、所贓品を持たない美術館というのは単なるイベント
会場で美術館といえるのかという問題が残る。また、美術館がタレント的な作
家や流行に乗ったアーテイストだけの発表の場になってしまうという恐れもあ
る。いずれにしても芸術に商売が絡んでくると、美術館のイベント会場化、芸
術家のタレント化が進行し、その功罪はなかなか難しい問題を提起することに
なると思われる。

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