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牛乳瓶の底のような銀縁メガネに、失礼ながらやや後退が始まった髪の毛、そして脂ぎった肌。
そうです、典型的なオジサン。でもこちらのオジサン、なかなかの人物なんです。
大垣共立銀行中村支店の支店長 吉田真司さん(46歳)。
吉田さんには、「真面目でお堅い」といった銀行員のイメージは全くありません。お客さんを自ら出迎えて窓口に案内、お茶まで出してくれます。菓子を差し入れることもしばしば。初めて訪れた客は、誰も支店長だとは気づきません。
「とにかくお客さんが順番を待って、イライラしているのを見るのが耐えられないんですよ。実家が雑貨屋で、よく店の手伝いをしていたからだと思うんですけどね。」
■ 銀行はサービス業
中村支店では、”全員テラー(窓口係)で、お待たせしません”を目標に掲げています。窓口が混み合えば、支店長以下、全員が窓口に出て対応するのです。「お客さんを待たせない」、サービス業では当たり前のことですが、銀行の世界ではまだ珍しいサービスだそうです。
当然、お客さんには大好評。支店はいつもにぎやかです。私が取材に訪れた日も、窓口で吉田さんが冷やかされていました。
「支店長、ちょっと顔赤いがね。昨日も飲みに行ったの?」
「いやー、わかります?ええ、昨日も少しばかり飲みまして、まだ酒が抜けていません。すみません。」
「あんたも好きやなあ。ちいっとは体気いつけや」
実は吉田さん、酔っぱらって電車で寝過ごし、朝起きたら小田原駅にいた、という武勇伝を持つほどのお酒好き。(ちなみにその日、それでも新幹線に乗って、何事もなかったように定時に出勤したそうですが。)こうしたプライベートな話も、ざっくばらんに披露してしまいます。そして、謝り方がスゴイ。
「社長、本当にこのたびはすんませんでした!」
店中に響き渡る大声で、机に脂ぎった額がぶつかりそうになるくらい、何度も何度もペコペコ頭を下げて、受話器の向こう側の取引先にひたすら謝る。あれだけ気持ちよく謝られたら、怒る気も失せてしまうというもの。吉田さんの行動を見ているだけで、不思議と元気が出てくるんです。
考えてみれば、私はご近所にある銀行の支店長さんの顔も名前も知らなければ、話をしたこともありません。大切なお金、どうせ預けるのなら気さくに話ができて、元気になれる銀行の方がいいですよね。実際、中村支店の業績は預金・融資ともに吉田さんの就任以来3年連続で伸び続けています。他の銀行もマネすればいいのに・・・。
■ 取引先の再生に全力
さて、とはいっても銀行業界は、いまだに不良債権処理のまっただ中。預金者へのサービスを良くすることはできても、融資を甘くするわけにはいかないはず。吉田さんは、それでもなぜ融資を伸ばすことができるのでしょうか。
「あきらめないことです。財務表を見て『融資できません』と言えば、絶対にヤケドするリスクはありません。でもそれでは地域の金融機関としての役割を果たせません。意欲のある経営者の方には『何とかしてあげたい』という気持ちで打開策を必死に考えます。
どうしても融資できないなら、新しい取引先を銀行が探してあげて、少しでも業績を良くしてもらうとか、リストラ策を提案して、融資できる財務状態に戻すことを提案するなど、親身になってお客さんのことを考えています。」
さらにもっと大事なのは、と付け加えて、
「正直なことです。融資できない時はきちんとダメだと言うことです。なぜ融資できないのか、どこを改善すれば融資できるのか、きちんと説明すれば一時的には恨まれても、結果的には感謝されることの方が多いです。ちゃんと話せばわかってくれます」
■ 当たり前のことを当たり前に
でも、「あきらめない」と「正直に話す」。
どちらも当たり前のことですよね?
「その通りです。でも窓口でお客さんを待たせることも含めて、これまで銀行はどこかに『お金を貸してやる』といった、お客さんを見下した姿勢があったのではないでしょうか。当たり前のことをきちんとやる。これがすべてだと思うんです」
■ オジサンは鬼支店長でもある
こんな優秀な吉田さんにも、実は悩みがあります。仕事熱心の余り、部下をあまりに激しく叱ってしまうのです。若手は萎縮して、吉田さんの顔色を伺うようになり、それがまた吉田さんの怒りを買う。悪循環が続いているのです。
このお悩み、私が担当する「難問解決!ご近所の底力」で取り上げました。そこで「部下のやる気を引き出す上手な叱り方」を伝授したのですが、現在悪戦苦闘中。その模様は7月下旬に放送する予定なので是非、お楽しみに。
追記
5月下旬、吉田さんに異動が発令されました。次なるポストは、飛騨・高山支店の支店長です。歴史と伝統の町で吉田流が、果たして通用するのか。頑張れ、ニッポンのオジサン!
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