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突然ですが、皆さんは今「夢」を持っていますか?それは、どんな夢ですか?
私は、この4月で40歳を迎えます。マラソンに例えれば、折り返し点を過ぎたわけですが、ふと気がつくと、人生の後半戦の目標となる「夢」が見当たりません。若い頃に思い描いていた色々な夢は、どれもいつの間にか萎んでしまったようです。
今回ご紹介する方は、天国から地獄に落ち、そこで新しい夢を見つけて元気を取り戻したオジサンさんです。

■ 夢見る56歳
東京・駒込の商店街の一角にある、小さな美容室。壁に貼られたモデルの写真が、ちょっと時代を感じさせます。
「ああ、どうも!お久しぶりです」と、愛犬「茶々」を抱えて出迎えてくれたのは、店長の帆足雅和さん、56歳。かつては「マーク帆足」の名で知られた、「カリスマ」美容師でした。年齢はさすがに隠せませんが、達者な話術は今でも健在。店には笑いが絶えません。
店の一角に奇妙な形の器具が置いてあります。実は、これが帆足さんの夢、名付けて「楽シャン君」。訪問美容に使う、携帯用の洗髪台です。年を取って足腰が弱り、店に来られなくなったお得意さんのために、帆足さんが日曜大工の腕を振るって作り上げました。座ったまま楽な姿勢で、店と同じように髪を洗えるというのが自慢です。
「お客様には、『もう美容院に行けないと思っていたのが、テレビを見ながら髪を洗ってもらえて夢みたい』なんて、言われますよ。私が帰る頃には、皆さん顔色がすっかり良くなっているんですよ。」

好評に気を良くした帆足さん、何と去年11月、これを本格的に製品化して売り出しました。手始めに、100台を生産。ネット上で注文を取っています。
「毎日毎日、パソコンを見るのが楽しみでね。『今日は、3人しかホームページ見てくれなかった』とか、『注文のメールが来た!』なんて、一喜一憂しています。」
■ あっという間の自己破産
とまあ、夢に向かって意気盛んな帆足さんですが、「楽シャン君」には深い思いが込められています。
30年前に最初の店を構えて以来、帆足さんの人生は順風満帆でした。バブルの頃は、3つの店を経営するまでになりました。
ところが8年前、悲劇が襲います。店を切り盛りしてきた妻・典子さんを突然ガンで亡くしたのです。そして、悲しみに暮れる間もなく、さらなる試練が襲いかかります。実は典子さんは、老後の蓄えを増やそうと家族に内緒で株に投資していました。それが、株式市場の低迷でほとんど紙くず同然になっていたのです。
帆足さんは、自己破産に追い込まれました。新築したばかりの自宅兼店舗を売却。親子3人、2DKのアパート暮らしが始まりました。
■ 失意の中で見つけた「夢」
苦境を知った知り合いの紹介で、雇われ店長として働き始めた帆足さん。しかし、長年築き上げてきた財産を失ったショックで、部屋に帰っても、何も手につかない日々を過ごしていました。「何か暇つぶしになることでもないか」と思っていたところ、或る事を思い出しました。以前、バイクを運転中事故に遭い、入院。その時、髪を洗うのにとても難儀し、楽な姿勢で洗髪できる器具の必要性を痛感したのです。「時間はたっぷりある。ちょっと作ってみよう」と思い、ホームセンターで石膏と針金を買い込みました。手先の器用さには自信があった帆足さんですが、作り始めると、これがなかなか難しい。
「最適な首の角度は?」、「高さを合わせるには、カメラの三脚がいい」…ふと気がつくと、何かに取り憑かれたように試行錯誤を重ねる自分がいました。
「どこかに、これが必要だと思ってくれる人がいるに違いない」。帆足さんの新しい夢がスタートしたのです。
■ ビジネスの現実は厳しいけれど
こうして、誕生した「楽シャン君」。自己破産の身でお金のない帆足さんに、昔からのお得意さんたちが500万円を私募債で出資してくれました。しかし、広告費用を出す余裕はないので頼りは口コミ。まだ半数の50台が売れ残っています。でも、落ち込む様子は全くありません。
「手広く店を経営していた頃の自分は、売り上げが気になって、毎日ギスギスしていた。でも今は、仕事が本当に楽しいんです。つらいことを経験したせいか、丸くなったというか、目先にこだわらなくなりました。」
「楽シャン君は、絶対世の中の役に立つ商品だと自負しているから、きっと皆さんに支持していただけると信じています。22歳で福岡から上京して、自分の店を持つ夢に向かって頑張っていた、あの頃のような気持ちです。」
そう言えば、自分にも毎日毎日、仕事をするのが楽しくて仕方がないという時期がありました。帆足さんの話を聞いて、とりあえず仕事も家庭も趣味も、毎日を一生懸命楽しむことから始めれば、「何か」が見つかりそうな気がしてきました。帆足さんの年齢まで、まだ16年もありますから。
皆さん、今夢を持っていますか?それはどんな夢ですか?
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